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先日、史実や近代戦争を念入りな取材で数々の著作を出された「吉村昭」さんが亡くなられました。ニュースでは尊厳死された内容が多かったのですが、菊池寛賞を受賞された戦艦武蔵を始め、長編小説のすばらしさは一度読んで見ることをオススメします。 吉村昭さんが、1つの小説の中で毎回描き出す人物は時として100人を越え、一人ひとりがありありとしているのは、テーマが事実である所以とともに、たとえ数行の記述であっても、人物の存在が史実へ与えた影響を最後の最後まで浸透させているからだと思います。 例えば、透明な水で絵の具のついた筆を洗っていくうちに水の色が変化していき、最終的に水はある色になっていきますが、その色を現在を生きる私たちが史実感じる「感情」のだとすると、吉村昭さんはどの色がどのタイミングでどれくらい溶け込んでいったのかの過程を、人という単位で著していきます。また、読者が抱いてきた史実に対する「感情」を思いがけない色に変える力をもっています。 中でも一番のお気に入りは「天狗争乱」です。 天狗は水戸藩の天狗党のことで、高校の歴史教科書には幕末騒動の1つとしてちょこっとのっているだけですが、この作品を読むと幕末から明治維新への道が坂本竜馬や岩倉具視など一部の人物によってなしえたのではく、民衆の大きなうねりがあったことが実感できる作品です。読み終えたあと、明治維新は民衆による革命であったとつよく感じます。 秋の夜長、ぜひオススメします。
by v_yuucha_v
| 2006-09-01 09:24
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